集合と集合が等しいとは?

今回は、二つの集合がお互いに等しいとはどういう事でしょうか?

数学の世界では、「等しい」という事も定義がないと何を示して良いか分かりません。

そこで、一般的な集合の相等について以下に示します。

 

(定義)

集合Aの全ての要素が集合Bに含まれるとき、 A⊂B と書きます。

このとき、集合Aは集合Bの「部分集合」と呼びます。

 

具体的には、

「全ての要素xについて、x∈Aならばx∈B」を満たすとき、

A⊂Bとなります。

 

(定義)

A⊂BかつB⊂Aが成立するとき、A=Bと書きます。

 

具体的には、

「全ての要素xについて、x∈Aならばx∈B」と

 「全ての要素xについて、x∈Bならばx∈A」を両方とも満たすとき、

 A=Bとなります。

 

(演習問題)

Cが空集合、かつ、Dが空集合のとき、

C=D

が成立する事を示して下さい。

ヒント:空集合の定義は?

ヒント:集合が等しいという事の意味は?

 

※上記より、空集合はただ一つしか存在しない事がわかります。

(二つの集合CとDがあったと仮定して、C=Dが導けるため)

 

空集合について

集合論をスタートする上で、何もない状態では議論の進めようがないので、

少なくとも一つの集合の存在を仮定する必要があります。

それが、要素を全く持たない集合「空集合」です。

 

(定義)

「集合Aの要素がaである事」を a∈A と書きます。

 

(定義)

「いかなる要素も持たない集合」を「空集合」と呼び、 φ と書きます。

具体的に書くと、「全ての要素xについて、x∈φでない」となります。

 

論理記号を用いると、

∀x  ¬ (x∈φ)

といった表記になります。(慣れないと少しわかりにくいかもしれません。)

(後々、Texを使って数式表記を変更するかも。しないかも。)

 

今回は、要素を持たない集合である「空集合」の説明を行いました。

ここからは、空集合の性質や、一般的な集合の性質を考察していきたいと思います。

 

※「集合」や「要素」といった表現をしましたが、公理論的集合論の立場では、

これらは全て「集合」として扱います。

(議論を進めるうちに少しずつ理解されると思いますが、集合と要素を区別する理由がないからです。ただ、通常の数学を議論する上では、分かりやすさと便利さがあるため、このような表現を覚えておいたほうが良いと思います。)

 

現代数学の基礎

代数学において、最も基本的な言語となっているのは、集合論です。

 

なぜ数学に世界では、集合論が一つの基礎として重要視されているのでしょうか?

この疑問に答えるには少し時間がかかりそうです。

 

通常、集合論には二種類の立場があると考えられます。

一つ目は、創始者であるカントールの意思を受け継いだ素朴な意味での(素朴)集合論

 →一般に初学者向けではあるが、あまりに巨大な集合を考えると矛盾が生じる。

二つ目は、ツェルメロとフランケルによって厳格に定められた公理論的集合論

 →厳密さはあるが、一般の人や通常の数学を扱う人にとっては難解と思われる。

 

これら二つの立場をバランス良く融合し、素朴集合論の分かりやすさは維持しつつ、

矛盾の生じない集合論の扱いを一つの目標として、この話を進めていきたいと思います。

 

一般の人向けには、「選択公理というのがあるんだ。理解はできなかったが雰囲気は伝わった」くらいの感想を一つのゴールと考えています。

専門家の方々にはご助言などいただけると非常にありがたいです。